ルネッサンス期のイタリアにおいて、貴族や大富豪が開くパーティーでは重々しく歩むバスダンスという社交ダンスが余興として楽しまれていました。次第に自分たちが踊るだけではなく、大広間に描かれていくフォーメーションをバルコニーから見学して楽しむようになっていきました。また、このころになってくると、歌やせりふも加えられるようになり、劇的なものへとなっていったのです。この劇的要素をもった流れのある舞踏会「バレット(BALLETTO)」が「バレエ(BALLET)の語源だといわれています。
そのうち、こうしたパーティーは権力や富を誇示して羨望を集めるためのものとなり、音楽、舞踊、美術、演劇、そして料理までも取り込んだ大スペクタクルとなっていきました。15世紀の終わりにはレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロの衣装のデザインや見せ物の仕掛けを担当したといいます。
1533年、フィレンツェの大富豪メディチ家からカタリーナがフランス王アンリ2世に嫁ぎました。この時代、イタリアの華やかな文化に比べ、フランスはまだまだ冴えない田舎だったため、妃はイタリアからたくさんの針子や料理人を連れて行き、また同時にバレエの文化も伝えました。その後、フランス宮廷でバレエは絢爛豪華な娯楽として盛んになり、宮廷人の嗜みとして定着していきました。
それから100年後、洗練された文化を開いたフランス宮廷にルイ14世が即位します。この頃、宮廷バレエは、国の内外に王権を誇示するための重要な政治的イベントになっていましたので、王自らが出演し、芸術家がさまざまな大仕掛けを考案し、数時間にも及ぶ豪華絢爛なスペクタクルが展開されました。また、ルイ14世は踊りの体系を作り上げ、足も爪先を外に開くことが基本になり5つの足のポジションができました。また、舞踏の振付けを示す「舞踏符」も確立されました。そして、より多くの質の良い踊り手を得るため1661年に「王立舞踏アカデミー」が設立され、ルイ14世自ら模範を示して振興に努めました。
しかし1670年、ルイ14世が自ら舞台に立つことをやめました。そうすると、宮廷の人々からも舞台から離れていき、バレエは宮廷内から劇場へと移り、専門舞踏家が演じるようになっていきました。
1669年に「オペラ座」が、1713年にオペラ座バレエ学校」が設立されました。 18世紀になるとバレエは現代のように物語を演じるようになりました。とはいえ、この頃はまだまだ伝統や権威にこりかたまった物語を演じるのみでした。
18世紀後半フランス革命が起こると、伝統や権威に反抗し、自由で神秘的なものを重んじるロマン主義がヨーロッパ中に流行しました。そして、男性中心であったバレエの世界に女性の踊り手バレリーナが誕生したのです。エキゾチックな異国趣味、妖精や悪魔が登場する幻想的なストーリーの「ロマンティック・バレエ」が生まれました。
この時代の有名な作品としては「ラ・シルフィード(1832年)」「ジゼル(1841年)」「コッペリア(1870年)」などがあります。
また、こうした幻想的なこの世でない世界を表現するために効果的なものがこの時代に2つ発明されました。それがトウ・シューズとチュチュです。トウシューズを用いてのポアントによる人間離れした軽やかな動きや、白いくるぶし丈のふんわりとした薄布の「ロマンチック・チュチュ」は重力を感じさせず実態のないはかない風情を表現するにはとても効果的なものでした。
フランスの宮廷バレエが伝わっていたロシアでも1738年にはバレエ学校が創立され、パリ、ロンドン同様に繁栄していました。フランス文化への憧れと自由さを併せもったロシアでは独自の舞踏テクニックが開発され、男女2人で踊るグラン・パ・ド・ドゥなどの様式を完成しました。また、ドラマを主体とした「ロマンティック・バレエ」にストーリーに関係なく踊りだけを見せる「ディヴェルティスマン」と呼ばれるシーンが取り入れられ、現在のバレエの構成が整えられました。また、ロマン主義に対して、古典的な要素を取り入れようとした「新古典主義」にちなんで、この時代のものはクラシックバレエと呼ばれるようになりました。
クラシックバレエにおいて有名な作品といいますと、チャイコフスキーに作曲を依頼した「眠れる森の美女(1890年)」「くるみ割り人形」「白鳥の湖」の三大バレエでしょう。
また、この時代、女性のポアントを生かした技術が目覚しく発展し、大きな動きを可能にした「クラシック・チュチュ」と呼ばれる丈の短い衣装が考案され、ロマンティックバレエの時代には1回回るのがやっとだったピルエットが32回のフェッテまで演じられるようになりました。
いわゆるクラシックバレエと呼ばれるスタイルは社会情勢の変化とともにイタリアで誕生し、フランスで育ち、ロシアで確立されたバレエなのです。
※ ルイ14世時代の踊りのことを現代では「バロックダンス」と呼んでいます。
※ ルイ14世の舞踊家としての話は『王は踊る』というタイトルで映画化されました。
※ ポアント:爪先で立つこと。
※ ピルエット:駒のような回転のこと。
※ フェッテ:足を打ち付けるように用いる連続回転のこと。
【トウシューズについて】
「いつか履いてみたい…」
バレエを習っている人なら誰もが思うことです(例外もありますけど)。一般的にバレエを習っていると言えば「爪先で立ったりするの?」と言われたりしますように、「バレエ=トウシューズ」というイメージが強くあります。しかし、実際、トウシューズを履けるようになるまでにはそれなりの訓練が必要なのです。
では、どれくらいでトウシューズを履けるようになるのでしょうか…。という質問を時々いただきます。これも一概に言えないのですが、大人の場合、1年〜2年くらい週に1回以上休まずにレッスンを受けると履ける可能性が高いです。結局のところ、トウで立つということはそれだけ足に負担がかかりますから、自分の体重が支えられるくらいの筋力が足につかないと先生から許可をいただくことは出来ません。
しかし、最近は、自己申告制のところやバレエをはじめてすぐに履かせてくれるお教室もあるそうです。トウシューズは確かにステキですが、きちんとしたレッスンを受けなければステキに履いて踊ることはできません。その点を留意して履くようにしてください。
※ ちょっとした拡張ネタ
トウシューズのことを「ポアント」や「ポワント」と呼んだりします。どう違うのでしょうか?トウシューズというのは、「トウ=爪先」「シューズ=靴」ということで、爪先で立つ靴という意味です。ポアントというのはPointeという綴りでやはり爪先という意味をもちます。
ちなみに、バレエを習われている方の多くは「ポアント」と呼ぶことが多いようです。先生も「ポアント」って言われる方が多いみたいですし。ちなみにうちの先生は「トウシューズ」って言います…。なので、わたしもついつい「トウシューズ」と言ってしまいます。ネット上では「ポアント」のが主流なのですけど…。
【トウシューズを選ぶ】
お店に行くとわかりますが、トウシューズは多くのメーカーがたくさんの種類をだしていることがわかります。サイズも長さだけではなく幅も数種類ありますし、底の硬さもいろいろあったりします。
こんなにたくさんのシューズの中で自分に合ったものを探すというのは非常に困難な作業です。
初めてトウシューズを履かれる方はまず先生に相談をしてみてはいかがでしょうか? 簡単なアドバイスはいただけると思います。また、お店の人に相談するというのも手です。とにかく、見ているだけでは全くわからないので、誰かに助けてもらわないと、はじめは厳しいように思えます。
ただし、先生やお店の人の話を鵜呑みにしないでください。それは、必ずしも正しいものを勧めてくれるとは限らないからです。どの辺りを注意すればいいのか…というのは私の手には負えませんので(トウシューズに関してもまだまだ素人ですので)こちらのサイトをご紹介させていただきます。
→ ポアント・フィッティングルーム
こちらは名前の通り、ポアントのフィッティングについて細かく紹介してくださっているサイトです。選び方のポイントなどありますので、ご参考にしてください。